東京都調布市の広大なキャンパスに位置するASIJ(アメリカン・スクール・イン・ジャパン)は、1902年に創立された日本最古かつ最大のアメリカン・スクールです。
ASIJへの入学は、単なる「受験」ではなく、「アメリカン・スクール・コミュニティへのパスポート審査」に近い性格を持ちます。2026年度以降の入学を目指す志願者のために、その傾向と対策を徹底的に解説します。
I. 入試の基本原理:優先順位(Priority Clauses)
ASIJの合格を勝ち取る上で、最も残酷かつ重要な真実が「優先順位」の存在です。ASIJは独自の「優先順位条項」に基づいて枠を埋めていきます。
1. 優先順位のヒエラルキー
- カテゴリー1: 米国政府・外交官の子女、および米国籍企業の駐在員子女。
- カテゴリー2: 在校生の兄弟姉妹(Siblings)。
- カテゴリー3: ASIJ卒業生の子女(Legacies)。
- カテゴリー4: 英語を母国語とする、またはネイティブレベルの英語力を持つ一般志願者。
- カテゴリー5: その他(日本国籍・一般家庭など)。
対策の視点: 一般の日本国籍家庭(カテゴリー5)が合格するためには、「圧倒的な英語力」に加え、「学校コミュニティへの貢献可能性」を願書と面接で証明しなければなりません。
II. 学年別:試験の傾向と対策
ASIJの選考プロセスは、志願する学年(Grade)によって大きく異なります。
1. 幼稚園・低学年(ELC ~ Grade 2)
この年齢層では筆記試験はなく、**「スクリーニング(行動観察)」**が主体です。
- 傾向: 数名のグループで教室に集まり、遊びやアクティビティを行います。教師は、子供が「英語の指示を理解しているか」「他者と協力できるか」「知的好奇心があるか」を観察します。
- 対策: 家庭内が日本語環境であっても、最低限の教室英語(”Put it away,” “Line up,” “Can I play?” 等)は無意識に出るレベルにする必要があります。
2. 中等部・高等部(Grade 6 ~ Grade 12)
この学年からは、客観的な数値指標が重視されます。
- 傾向: MAP (Measures of Academic Progress) テスト、または SSAT(Secondary School Admission Test)のスコア提出が必須です。
- 対策: * Math(算数): 日本の公立校レベルより進んでいます。英語で数学用語(Equation, Fraction, Geometry等)を理解し、文章題を解く訓練が必要です。
- English(英語): 単なる英検レベルではなく、Critical Reading(批判的読解)の能力が問われます。著者の意図やメタファーを読み取る力が必要です。
III. 願書(Application)とエッセイの書き方
ASIJの願書は、家族の歴史と価値観を物語るドキュメントです。
1. 親のエッセイ(Parent Statement)
「なぜASIJなのか?」という問いに対し、「英語を習得させたい」という回答は最も避けるべきです。
- 合格へのヒント: ASIJのミッションステートメント(Compassion, Courage, Curiosity)に触れ、家庭の教育方針がそれといかに合致しているかを具体的なエピソードで記述してください。
2. 生徒のエッセイ(中高生のみ)
自分がいかに「多様なコミュニティに貢献できるか」をアピールします。スポーツ、芸術、社会奉仕など、学業以外の実績も大きな加点要素となります。
IV. 保護者面接(Parent Interview)の徹底攻略
ASIJにとって、保護者は「顧客」ではなく「パートナー」です。面接では、**「この親は学校の運営に協力的か」**が厳しくチェックされます。
- 言語要件: 少なくとも片親(通常はメインで学校と連絡を取る側)が、通訳なしで深い議論ができる英語力を持っている必要があります。
- 頻出質問:
- “How do you handle conflict at home?”(家庭での衝突にどう対処していますか?)
- “How will you contribute to the ASIJ community?”(コミュニティにどう貢献しますか?)
- 対策: PTA活動やスポーツのコーチ、イベントのボランティアなど、具体的な貢献イメージを提案してください。
V. 2026年度に向けたロードマップ
| 時期 | アクション |
| 入試1年前(1月〜8月) | 英語力の底上げ: 子供は英会話、親は面接準備。現在の学校での成績を「最高」に保つ。 |
| 秋(9月〜11月) | 願書提出: 早めの提出が有利に働く場合があります(Rolling Admission)。 |
| 冬(12月〜2月) | テスト・面接: MAP/SSATの受験と、学校でのスクリーニング。 |
| 春(3月〜4月) | 結果通知: 合格、不合格、またはウェイティング(待機)。 |
VI. 最後に:ASIJが求める「理想の家族像」
ASIJが求めているのは、単に頭の良い子供ではありません。「自立して考え(Independence)」「他者を思いやり(Compassion)」「世界に貢献する(Contribution)」というアメリカン・スクールの価値観を体現する家族です。
入試の準備は、家族の教育方針を再確認する素晴らしい機会でもあります。合格の先には、世界中に広がる強力なアルムナイ(卒業生)ネットワークと、最高峰の教育環境が待っています。

